コラム

2025.09.16

【“すごい”建築】個性的な建築物がズラリ。「EXPO 2025 大阪・関西万博」編

長い年月をかけて、さまざまな困難を乗り越えた末に完成する建築物。一戸建て住宅、マンション、複合ビル、ホテル、ミュージアム……建築物の種類は多種多様だが、どんな建築物にも多くの人の手が掛かっている。各領域ごとの専門家が知恵を出し合い、多くのプロセスを踏んで、建物を建てている。

こうして生み出された建築物からは学びが多い。とくに近年は、美しいデザインとサステナビリティなアイデアを両立した建築物が増えている。【“すごい”建築】シリーズでは、今注目したい建築物を紹介する。第1弾では、“建築の祭典”ともいわれる大阪・関西万博の個性的な建築物を5つピックアップした。

1. 大屋根リング/主要施設

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、2025年4月13日から10月13日まで開催されている2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博/EXPO 2025)。万博のシンボルとしてつくられたのが、大屋根リングだ。

会場を囲うように一周するデザインの大屋根リングは、「多様でありながら、ひとつ」という理念を表現している。高さは約12m(外側は約20m)、全周は約2kmに及び、2025年3月4日には、“世界最大の木造建築物”としてギネス世界記録に認定された。使用木材は、スギやヒノキといった国産木材が約7割、外国産の木材が約3割とのこと。日本の神社仏閣などに用いられる伝統的な工法に、現代の工法を加えてつくられている。巨大ゆえに、工区は3つに分けられ、それぞれの担当が独自の技術を用いて設計を行った。

大屋根リングは、万博閉幕後には解体される仮設建築として設計された。しかし、圧倒的な存在感や、344億ともされる建設費などを考慮し、残す方向での検討が進められている。議論は難航しており、方針決定は9月頃を見込む。大屋根リングの今後にも、引き続き注目したい。

設計:藤本壮介 基本設計:東畑・梓設計共同企業体
実施設計:(北東工区)大林組・大鉄工業・TSUCHIYA共同企業体・株式会社安井建築設計事務所、(南東工区)清水・東急・村本・青木あすなろ共同企業体、(西工区)竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木共同企業体・株式会社昭和設計

▶︎大屋根リングの詳細はこちら

https://www.expo2025.or.jp/expo-map-index/main-facilities/grandring

2. EXPO ホール「シャインハット」/主要施設

万博のメインホールであり、開・閉会式などの会場となるEXPO ホール。巨大な円すいの上に、黄金に光り輝く円形の屋根が乗った、印象的な建築物だ。1970年に開催された大阪万博のシンボル「太陽の塔」を意識してつくられた。

画像は、大阪府日本万国博覧会記念公園に佇む「太陽の塔」

photo by note thanun on Unsplash

EXPO ホール内の円形劇場は、白い布地で覆われている。今回の万博のテーマである「いのち輝く未来」を象徴し、問いかけるような建築物となっている。

基本設計・監修:株式会社伊東豊雄建築設計事務所
実施設計:大成建設株式会社・株式会社昭和設計

▶︎EXPO ホール「シャインハット」の詳細はこちら

https://www.expo2025.or.jp/expo-map-index/main-facilities/expohall

3. 日本館/国内パビリオン

大屋根リングの外側、東ゲートゾーンに位置する日本館。木の板がズラリと環状に並ぶ、インパクトのあるデザインが印象的だ。

テーマは、「いのちと、いのちの、あいだに」。“循環”の理解を促すパビリオンを、建築物でも表現している。木の板の隙間からは内部の雰囲気を感じ取ることが可能。テーマにもある「あいだ」を来場者にそれとなく意識させている。

メイン素材の木の板は、CLT(直交集成板)。万博閉幕後は、日本各地で建物として活用される予定だ。

総合プロデューサー:佐藤ナオキ 設計:日建設計

▶︎日本館の詳細はこちら

https://2025-japan-pavilion.go.jp

4. マレーシアパビリオン/海外パビリオン

個性豊かな海外パビリオンが立ち並ぶエンパワーリングゾーンのなかでも、異彩を放つのが、マレーシアパビリオン。テーマは、「調和の未来を紡ぐ」。日本を代表する建築家の隈研吾氏が設計を手がけている。

外観は、マレーシアの伝統的な織物「ソンケット」がモチーフ。竹を編み込むことで、ナチュラルで柔らかな表情を表現している。

隈研吾氏は、マレーシアパビリオンのほか、「シグネチャーパビリオン EARTH MART」「カタールパビリオン」「ポルトガルパビリオン」の合計4つの建築物の設計を担当している。ローカリティ溢れる建築に注目だ。

設計:隈研吾
施工:大成建設設株式会社

▶︎マレーシア館の詳細はこちら

https://www.expo2025.or.jp/official-participant/malaysia

5. サステナドーム(ジュニアSDGsキャンプ)

万博のコンセプトは「未来社会の実験場」というだけに、各界の最新技術が集結するが、なかでも注目度が高いのが、環境配慮型コンクリートを採用した「CUCO-SUICOMドーム(クーコスイコムドーム)」だ。サステナドーム(ジュニアSDGsキャンプ)という名称で、西ゲート付近、フューチャーライフゾーンに位置している。

CUCO-SUICOMドームは、2つの技術をかけ合わせることで環境配慮を実現している世界初の取り組み。躯体に2種類の環境配慮型コンクリートを採用し、CO2排出量を従来より約70%削減している。それだけでもかなりすごいが、国内工場で製作したポリ塩化ビニルのドーム型をベースとして、コンクリートを吹き付ける独自の工法により、短工期・低コストも実現。建設業のさまざまな課題を解決に導く、画期的な技術といえる。

そんな次世代ドームでは、子どもを対象としたワークショップや展示などが開催される。最新技術に触れながら、楽しく学べるまたとない機会となりそうだ。

設計:鹿島建設株式会社
施工:鹿島建設株式会社

▶︎サステナドームの詳細はこちら

https://kajima-expo2025.jp/2025/pavilion-01.html

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