コラム

2026.01.05

建設業の労務安全2025総まとめ|2026年はどう変わる?現場が備えるべきポイント

2025年は、建設業における労務安全の環境が大きく動いた1年だった。法改正やデジタル活用の広がりにより、現場の安全管理に求められる要件は、これまで以上に高度化し、体系化されつつある。

本記事では、2025年の主要トピックを整理しつつ、2026年に向けて現場がどのように備えるべきかをまとめている。

1. 2025年に起きた「建設業×労務安全」の主要トピック

2025年は、労務安全に関する制度・現場運用の両面で変化が多かった。とくに、以下の3つが大きな動きとして挙げられる。

1-1. 事業者が行う退避・立入禁止措置の強化

2025年は、重大災害を防ぐための“危険区域の管理”がこれまで以上に重視された1年だ。厚生労働省の通達(※)では、「退避」「立入禁止」「火気作業の制限」「悪天候時の中止」 といった基本措置を事業者が確実に行うことが、あらためて明確に示された。

ポイントは、対象が“作業者だけではない”と明確化されたこと。一人親方、協力会社、資材搬入業者など、現場に立ち入るすべての人に同じルールが適用される。

そのため、現場では次のような管理がこれまで以上に標準化しつつある。

・危険区域の明示、立入禁止措置

・火気作業の許可制

・気象状況に応じた作業判断

これは単なる管理の強化ではなく、「現場にいる全員が同じ基準で安全に行動する」ための土台づくり。安全管理の意識がより高まった1年だったと言える。

※事業者・一人親方の皆さまへ |厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/001254088.pdf

1-2. 人材構造の変化:若手・外国人材・シニアの三層化

建設業の就業者は高齢化が進む一方、若手や外国人材の参入も着実に増えている。2025年は、この三層化がより明確になり、「伝わる教育」「働ける環境づくり」「負担を軽減する管理体制」といったテーマが現場で注目を集めた。

1-3. デジタルによる安全管理の標準化が本格化

2025年は「DXの本格運用元年」と言えるほど、安全教育・安全管理のデジタル化が広がった。とくに、教育動画の標準化、パトロール記録のデジタル管理、ヒヤリハットの共有など、これまで属人化しがちだった領域が仕組み化されつつある。

2. 2025年の現場課題 未だ残る“属人化”と“情報の分断”

2025年の動きを踏まえても、現場には依然として課題が残っている。とくに大きいのは、以下の2点ではないだろうか。

2-1. 安全教育のレベル差が大きい

若手や外国人材を含めた教育において、「教える人によって言い回しが異なる」「印刷資料が古いまま使われる」「初回教育と現場教育の整合性が取れていない」といったバラつきは依然として大きい。

とくに、教える人の力量に左右されるため、現場ごとに習熟度の差が広がりやすい点は課題である。

2-2. 情報管理が紙や口頭に依存している

年間計画、教育履歴、パトロール記録などが紙やExcelに分散している状況は、以前から課題として指摘されてきた。管理の属人化や引き継ぎ負担の増大だけでなく、トラブル発生時に「いつ・誰が・何を実施したのか」を示す裏付け資料が不十分になるリスクもある。

2025年はデジタル化が広がった一方で、「紙・口頭に依存する部分が依然として残っている」という現実も明確になった年だった。標準化が進む企業と、従来のやり方にとどまる現場の差が浮き彫りになり、「情報の分断」が改めて大きな課題として認識されたと言える。

3. 2026年に向けて、建設業の労務安全はどう変わるのか

Photo by Raymond Yeung on Unsplash

2026年は、安全管理の考え方や取り組みが、さらに整理されていく年になりそうだ。「標準化」「見える化」「説明責任」という流れを踏まえながら、2026年のポイントを見ていきたい。(※)

※「中小建設業における建設現場の安心・安全の確保に向けたデジタル化推進に関する戦略策定」|一般社団法人 機械システム振興協会

https://www.mssf.or.jp/news_r06019

※安全で働きやすい“未来の土木現場”|産総研

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250613/pr20250613.html

3-1. 安全教育の「標準化」が進む

2026年は、多様な人材が働く現場に合わせて、安全教育のバラつきを減らす動きがさらに広がりそうだ。若手、外国人材、シニアといった層が並行して活躍する現場では、指導内容が担当者によって変わってしまうことが大きな課題となる。

こうした状況を踏まえ、多くの企業に、「自社版の標準教材」を整理したり、初回教育・日常KY・ヒヤリハット共有を体系化したりする動きが見られる。担当者の熟練度に頼るのではなく、「誰が教えても一定の品質で伝えられる状態」をつくることで、安全教育の機能そのものを底上げできると考えられているためだ。

2026年は、こうした教育の枠組みづくりが、より実務に近い形で求められていく年になるだろう。

3-2. パトロールの「見える化」がより求められる流れに

2025年3月には、国土交通省が「工事事故の未然防止」を重点項目として掲げ、ヒヤリハット共有や是正措置の確実な実施を呼びかける資料を発信した。(※)こうした行政の方針のなかで、現場パトロールについても 「指摘内容や改善の流れをどこまで可視化できるか」 が注目されるようになってきた。

国交省の資料では、事故防止の観点から、以下が繰り返し求められている。

・ヒヤリハットなどの安全情報を共有すること

・是正の確実な実施と、再発防止策の徹底

この流れを踏まえると、2026年に向けては「指摘→是正→再点検」という改善サイクルを見える化し、管理者だけでなく現場全体に共有できる状態にすることが、より重要になっていくだろう。

※受発注者一体となって重大事故撲滅を目指します~令和7年度「工事等事故防止重点対策項目」を決定~|国土交通省

https://www.kkr.mlit.go.jp/news/top/press/2024/20250328-2zyuudaizikobokumetu_kouzitouzikobousizyuutenntaisakukoumoku.html

3-3. 安全管理の「説明責任」が問われる時代へ

労務安全をめぐる環境では、「なぜこの事故が起きたのか」「どのように是正したのか」「安全管理をどう運用しているのか」といった点を、企業が外部に説明する必要性が年々高まっている。重大災害防止の流れが続くなかで、事故・トラブルが起きた際に安全管理を示せる記録と運用体制が、これまで以上に重要視されそうだ。

これにより、安全管理は単にやるべきことをやるだけでなく、「なぜその対応を選び、どんな根拠で判断したのか」までを説明できる状態が求められるようになるだろう。2026年は、安全管理に関わる情報の整理や記録の扱いが、より“企業としての責任”に近い位置づけになっていく年になりそうだ。

4. 現場が2026年に向けて“すぐに備えられること”

以下では、どの現場でも着手しやすい共通のポイントについて整理する(※)。ただし、安全管理に“万能のフォーマット”は存在しないため、ここで挙げる内容も自社や現場の実態に合わせて柔軟にカスタマイズしていくことが大切だ。

※建設業における安全対策|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001463973.pdf

4-1. 教育資料の棚卸しと整理

これまで現場で使ってきた安全教育資料、KY (危険予知) スライド、研修メモ、過去の安全講習資料などをすべて洗い出そう。古い資料や場当たり的なメモが混ざっていないか、内容が古くなっていないかをチェックすることで、今後の教育の土台をクリアにできる。

4-2. 教育・パトロール記録の統一管理

紙、Excel、メモ帳など、形式がバラバラだと情報が分散し、管理や共有が難しくなる。記録方法をひとつに絞り、できればクラウドベースで一元管理することで、「誰がいつどこで何をしたか」が明確になり、安全管理の効率と信頼性が上がる。

4-3. 是正・改善の流れをフォーマット化

パトロールやヒヤリハット報告後の改善プロセスをテンプレート化しておくと、誰でも同じ流れで対応できるようになる。例えば、「指摘内容 → 背景・原因 → 改善策 → 実施日 → 再発防止策」のようなフォーマットをあらかじめ決めておけば、改善の履歴を明確に残せるだろう。

4-4. 多様な人材に対応した“伝わる安全”への切り替え

若手、外国人材、シニアなど、さまざまな年齢層・背景の作業員が混在する現場では、従来の「口頭+紙資料中心」の教育は限界。動画や図解、短時間で完結する教材など、「誰でも理解しやすい、安全を伝える工夫」を取り入れることで、安全教育の効果を高められる。

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https://acvie.uishare.co

5. 2026年の安全管理は、“そろう・見える・つながる”へ

2026年に向けた安全管理の焦点は、仕組みを整え、情報が流れる状態をつくること。教育・記録・改善の流れがそろい、現場の状況が見える化されれば、属人的な運用から自然と脱していく。

こうした土台づくりは、4章「現場が2026年に向けて“すぐに備えられること”」で触れたように、基本の整理から始まる。特別な仕掛けよりも、まずは現場が同じ方向を向ける状態をつくることこそ、2026年に向けた最も確実な備えとなるだろう。

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