コラム

2026.05.07

【“すごい”建築】通り過ぎるのはもったいない。日本の駅建築編

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【“すごい”建築】通り過ぎるのはもったいない。日本の駅建築編

長い年月をかけて、さまざまな困難を乗り越えた末に完成する建築物。一戸建て住宅、マンション、複合ビル、ホテル、ミュージアム……建築物の種類は多種多様だが、どんな建築物にも多くの人の手が掛かっている。各領域ごとの専門家が知恵を出し合い、多くのプロセスを踏んで、建物を建てている。

こうして生み出された建築物からは学びが多い。とくに近年は、美しいデザインとサステナビリティなアイデアを両立した建築物が増えている。【“すごい”建築】シリーズでは、今注目したい建築物を紹介する。

第4弾では、日常のなかにある“すごい建築”に目を向けてみたい。通勤や旅行で何気なく利用している駅も、実は高度な設計と技術の結晶だ。今回は、思わず立ち止まって見入ってしまう日本の駅を3つピックアップした。

1. 金沢駅(石川)

石川県金沢市のランドマークとして知られる「金沢駅」。その象徴ともいえるのが、巨大な木造の門「鼓門(つづみもん)」だ。伝統芸能・能楽で使われる鼓をモチーフにしたこの門は、2本の太い柱が弧を描くように組み合わさり、力強さと繊細さを併せ持つ造形となっている。

その奥に広がるのが、ガラス張りの「もてなしドーム」。ドーム状の屋根はやわらかく光を取り込み、雨や雪の多い金沢の気候に配慮しながら、明るく開放的な空間をつくり出している。金沢らしいもてなしの思想が、駅全体で表現されている。

その美しさは国内外でも高く評価され、「世界で最も美しい駅」のひとつとして紹介されたことでも知られている。訪れる人を迎え入れる空間そのものが、この駅の大きな魅力だ。

設計:ジェイアール西日本コンサルタンツ

施工:清水建設

鼓門設計:白江龍三

鼓門施工:治山社・近藤JV

2. 熊本駅(熊本)

熊本の新たな玄関口として整備された「熊本駅」。駅舎は、建築家・安藤忠雄氏による設計で知られ、2019年に完成した。

まず目を引くのが、外壁のゆるやかな曲線だ。これは、熊本城の石垣に見られる「武者返し」の反りをモチーフにしたもの。直線的な建築とは異なる、力強さと美しさを併せ持ったフォルムが、熊本の“顔”としての存在感をつくり出している。

一方で、ホーム上屋には木材が大胆に使われている。木組みのボリュームが連なる空間は、夏目漱石が「森の都」と表現した熊本を思わせるもの。木立の下にいるようなやわらかな光と、落ち着いた空気が広がる。

コンクリートと木、重厚さとやさしさの対比がひとつの空間に同居している点に、熊本駅の魅力がある。通り過ぎるだけでは気づきにくいが、立ち止まって見ることで、その設計意図がじわりと伝わってくるだろう。

デザイン計画:安藤忠雄

設計:九州旅客鉄道、安井建築設計事務所

施工:鹿島建設

3. 日立駅(茨城)

茨城県日立市にある「日立駅」は、“海を望む駅”として知られる。最大の特徴は、海に向かって大きく開かれたガラス張りの空間だ。視界を遮るものはほとんどなく、太平洋の水平線まで一望できる。駅にいながら、まるで展望台に立っているかのような開放感を味わえる。時間帯によって表情を変える海と空も、この駅の魅力のひとつだ。

設計を手がけたのは、茨城県出身の建築家・妹島和世氏。ルーヴル美術館別館(ルーヴル・ランス)の設計にも携わるなど、世界的に評価される建築家の一人である。余計な装飾をそぎ落とし、光や風景そのものを取り込むようなシンプルな構成が印象的だ。

日立駅には、日常のなかにありながら、ふと立ち止まりたくなる空間が広がる。通り過ぎるだけではもったいない、景色そのものが主役の駅建築だ。

デザイン監修:妹島和世建築事務所

設計:東日本旅客鉄道、ジェイアール東日本建築設計事務所

施工:東鉄工業

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