
“人を大切にする建設会社”を見える化?自主宣言制度とは
建設業は、多くの技能者によって支えられている。現場で経験を積み重ねる人がいるからこそ、建物やインフラは形になっていく。
一方で、建設業では長年、人手不足や高齢化が課題とされてきた。若手人材の確保や定着、技能継承の重要性が高まるなかで、「働き続けたいと思える会社づくり」に取り組む企業も増えつつある。
そうした流れのなかで始まったのが、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」だ。技能者の育成や処遇改善、安全管理などに取り組む企業が、自らその姿勢を宣言する仕組みとして注目されている。
本記事では、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の概要を整理しながら、なぜ今こうした取り組みが求められているのか、そして建設業がどのように変わろうとしているのかを考えていく。
1. 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」とは?
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度(愛称:職人いきいき宣言)」とは、技能者の育成や処遇改善、安全管理などに取り組む企業が、自らその姿勢を発信するための仕組みだ。
建設業ではこれまで、技術や経験を持つ技能者が現場を支えてきた。一方で、人手不足や高齢化が進むなか、若手人材の確保や技能継承が業界全体の課題となっている。そうした背景から、技能者を大切にする企業づくりを業界全体で進めていこうという動きが広がっている。
職人いきいき宣言では、例えば以下のような取り組みが重視されている。
・資格取得や人材育成への支援
・安全で働きやすい現場環境づくり
・適切な労務費確保や処遇改善への取り組み
・週休2日など、働き方改善への対応
・CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用
・技能者を大切にする企業同士の連携や取引促進
こうした内容を企業自らが宣言し、社内外へ発信することで、「どのような考え方で人材育成や現場づくりに取り組んでいるのか」を見える化しようとしている。(※)
また、この制度は認定や表彰とは少し異なる。一定の基準をクリアした企業を選別するというよりも、「技能者を大切にする」という方向性を、業界全体で共有していこうという意味合いが強い取り組みといえるだろう。
※建設技能者を大切にする企業の自主宣言「(職人いきいき宣言)」とは|国土交通省
https://jishusengen.mlit.go.jp/files/guideline.pdf?20260514033320
2. なぜ今、「技能者を大切にする会社」が求められているのか?
建設業では今、担い手不足が大きな課題となっている。現場を支えてきた技能者の高齢化が進む一方で、若手人材の確保や定着には苦戦している企業も少なくない。
こうした背景から、近年は「人をどう集めるか」だけでなく、「働き続けたいと思える環境をどうつくるか」が重視されるようになってきた。
例えば、休日の確保や労働環境の改善、安全対策の強化、人材育成への投資など、これまで“当たり前”とされてこなかった部分を見直す動きも広がっている。技能者不足が深刻化するなかで、「人を大切にすること」が、企業にとって重要なテーマになり始めている。
また、働く側の価値観も少しずつ変化している。「どんな仕事をするか」だけでなく、「どんな会社で働くか」を重視する人も増えてきた。給与や待遇だけでなく、育成環境や職場の雰囲気、安全への考え方なども、会社選びのポイントになりつつある。
自主宣言制度には、そうした変化のなかで、「自分たちはどんな会社を目指しているのか」を企業自らが発信していく意味合いもある。単なる制度というより、建設業の働き方や会社のあり方を見直していく流れのひとつとして注目されている。
3. 「技能者を大切にする」とは、どういうことなのか?
では実際に、「技能者を大切にする会社」とは、どのような会社を指すのだろうか。
もちろん、給与や待遇は重要な要素のひとつだ。しかし、それだけで決まるものではない。近年は、「安心して働き続けられるか」「成長できる環境があるか」といった点も重視されるようになっている。
例えば、資格取得を支援したり、若手育成に力を入れたりする企業もある。現場で経験を積むだけでなく、「どう成長していけるか」を考えながら働ける環境づくりは、技能継承の面でも重要になっている。
また、安全管理やコミュニケーションのあり方も大切なポイントだ。体調不良を言いやすい空気づくりや、現場で声をかけ合える関係性など、“働きやすさ”は日々の積み重ねによってつくられていく。
さらに近年は、週休2日への対応やCCUS(建設キャリアアップシステム)の活用など、働き方やキャリア形成を支える取り組みも広がりつつある。すぐにすべてが変わるわけではないが、「より働き続けやすい業界へ変えていこう」という流れは、少しずつ強まっている。
「技能者を大切にする」とは、特別なことをするというよりも、“現場で働く人を中心に考える”という姿勢に近いのかもしれない。
4. これからの建設業は、会社の姿勢が問われる
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」は、まだ業界全体に広く浸透しているとは言い切れない。地域や企業規模によって認知度や取り組み状況には差があり、「これから」という現場も多いのが実情だ。
とくに中小企業では、日々の現場対応や人材確保に追われるなかで、新たな制度への対応まで手が回らないケースもあるだろう。一方で、人手不足が深刻化するなか、「人を大切にする会社であること」を発信する重要性は、少しずつ高まっている。
近年は、働く側も「どんな会社で働くか」を重視する傾向が強まっている。給与や条件だけでなく、育成環境や働きやすさ、現場の雰囲気などを含めて会社を選ぶ時代になりつつある。だからこそ今後は、「人を大切にしているか」が、企業選びのひとつの基準になっていくのかもしれない。
建設業は、人がいなければ成り立たない。どれだけ技術が進化しても、現場を支えるのは技能者の存在だ。技能継承や若手育成が求められる今、働く人を中心に考える取り組みは、これからの建設業においてますます重要になっていきそうだ。
5. 「職人いきいき宣言」をしてみたいと思ったら
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度(職人いきいき宣言)」は、2025年12月にスタートした新しい取り組みだ。申請受付も同年12月12日から始まっている。
宣言を行った企業は、専用サイト上で公表されるほか、シンボルマークや「職人いきいき宣言」の愛称を自社ホームページなどで活用できる。技能者を大切にする姿勢を社内外へ発信できる点は、人材確保や企業イメージ向上の面でもひとつのメリットになりそうだ。
また、制度では、宣言企業同士の取引促進や、今後の経営事項審査での加点も予定されている。単なるPRにとどまらず、業界全体で「技能者を大切にする企業」を評価していこうという流れも見え始めている。
申請は専用サイトから行うことができ、現在すべての取り組みが完了していない場合でも、一定期間内に取り組みを開始する前提で宣言が可能となっている。まずは、自社でどんな取り組みができるのかを整理するところから始めてみるのも良いかもしれない。
▼「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」専用サイト


